2016年11月05日

これからのシェアリング社会

 あなたは、いずれ自然災害に出会い、国のどこかで紛争が起き、街は老人と外国人ばかりになり、持ち家や道路を維持することも困難になり、年金どころか貯めた円が紙くずとなったらどうしますか?
超ネガティブな質問に思えるが、世界で今起きていること、起きたこと、統計的な事実を冷静に見れば、今の日本の現状ではこのいくつかは現実になるだろう。

これからのシェアリング社会

明るい未来を信じ、リノベーションで消費を拡大し切り開いていこう。強い向上心を持続すれば大丈夫、とその人は今を乗り切れるかもしれない。しかし、今の社会のシステムではあらゆる格差と国の借金は増え続け、膨張した資本主義は限界を迎えている。既存の経済に対するシェアリング・エコノミーの議論は始まったばかりだが、市民生活レベルで考えても、災害・紛争時の対応やこれからの厳しい生活を乗り切るためのキーワードはこの『シェアリング』にある。
 

〇 ハウスシェアリング

 都会のシェアハウス、ゲストハウスは認知されているが、維持管理の負担増、投機により高騰する宿泊施設という逆の動きには対応できない。街はグローバルに人が流動し、空き家率、生計比指数、貧困ギャップ率が増え、世代により住居費が大きな生活費負担となっている。
片や家や部屋が余る一方、片やそれを借りられない社会のシステムの矛盾。

これからのシェアリング社会

Airbnbは、もともと『部屋を10ドルで貸してもいいよ。』 『○月○日から1週間借ります。』 といった単純なやりとりで成立する、旅行者に良心的な宿泊サイトであった。(Airbnbサイト)
このサイトビジネスはシェアリング・エコノミィの典型と言われ久しいが、最近は営利目的物件が増え値段が上がり、日本では民泊禁止の縛りが厳しく機能していないばかりか、今や民泊は警察のテロ防止の口実に利用されている。確かに今住む沖縄のマンションには、中国系のオーナーが旅行者を宿泊させており、それが知人なのかビジネスなのかさえ判別がつかない。

日本人同士ならいいかというと、日本にはオープンなハウスシェアリングの歴史も風土も理解もなく育っていない。今の生活は1か月単位で家を空けることも多く、ビジネスではなく、空いた時に一定期間部屋を貸し出すことを模索し始めた。

これからのシェアリング社会

古民家の物件がでたと言うので見に行った。
琉球古民家は空き家が多いが、神様がいるため親族、門中が売買を許さず賃借も難しい。そこに近くの離島でゲストハウスの一棟貸しをしているオーナーがいた。独立家屋ならではの維持管理や集落の理解などの苦労を聞いたが今では外国人客が増えているという。彼らは家族でなくても旅の途中で、グループでシェアするというスキルを身に着けている。

これからのシェアリング社会

このような観光やちょい住みにかかわらず、リゾートマンションを共同購入する例は除き、居住目的でシェアリングができないだろうか。新しい都市開発が安い居住を供給してきた時代は過ぎ、ハウスシェアリングの考えとシステムづくりが必要だと痛感する。


〇 カーシェアリング

 都市生活者すべてが同じ利便性をシェアするためには、インフラと公共交通の整備が必要であるが、自家用車は地方生活には欠かせない。自家用車を捨て、日常的に2kmまでは徒歩、10kmまでは自転車、それ以上はバス、長期必要時はマンスリーレンタカー、緊急時はタクシーと近所の大手レンタカーという生活を試みて、健康になったばかりか、年間40万円の節約は海外旅行の交通費と相殺できた。CO2削減という意味では飛行機の移動距離が長い分平均値にとどまるだろう。
さらに、これを進め補完するものはカーシェアリングという結論に至った。

これからのシェアリング社会

 カーシェアリングはタイムズとオリックスが有名であるが、需要のある都市部を中心に広がっているものの地方には浸透していない。ここで言うのはトータルで安さを感じない今のカーシェアリングビジネスの話でない。
欧米では、スマホで運転手を募るライドシェア(相乗り)が広がっている。その最大手のUberは日本ではまだ東京だけだが、既に全世界に広がり、欧米の主要都市ではタクシーの需要を越えている。(Uberサイト)
日本ではNottecoが有名で、運転手と時間さえ合えば、バスの3分の1、タクシーの15分の1程度の料金でシェアできる。(Nottecoサイト)

これからのシェアリング社会

自交総連はこれを白タク行為であるとして合法阻止の運動を行っているが、Nottecoでは運転手の本人確認、独自の運転手評価を行っている。しかし、まだ議論も法整備も行われていない。日本では近代まで船以外の公共交通機関がなく、高度成長時代に短期間で自家用車比率が増えたために、車をシェアするという風土が育たなかった。欧米のようにヒッチハイクで旅行することや、東南アジアで白タクと交渉することも、山から下りた林道で車に拾われた経験すらない人も多い。

これからのシェアリング社会

渋滞の激しいジャカルタでは乗客一人の運転は追加料金が課されるため、料金所の手前で学生が手を挙げ乗り込んでこずかい稼ぎをする。白タクの溢れる街なかにあって、これも庶民のカーシェアリングの知恵である。安全性の理由だけで、環境対策としての輸送のシェアリングも、貧困層が増えているのに規制緩和の低料金化も、限界集落が増えているのにカーシェアリングも行えない国の未来なんて見えてこない。


〇 フードシェアリング 

 フードマイレージとは食べ物の輸送量と距離を掛けた数値で、国内消費以外のCO2排出負荷を示すもので、食料自給率が低く海外からの食糧輸入の多い日本は、世界一フードマイレージが高い国である。
同時に、アメリカの多国籍食品企業ほどあからさまではないが、大量、安価、安定買い付けによるアグリビジネスは、途上国の生活向上に役立つどころか、契約農家は貧困から逃れられない。日本では輸入食料の30%は廃棄されると言われ、食べられるのに捨てられる、いわゆる食品ロスの廃棄量632万トンは、世界の飢餓人口分を救うことができる。
もったいない文化の日本がこんな状況に陥った原因は、業者の納入期限しばり、生ものを好む習慣、腐りかび易い環境などであるが、このうち家庭ゴミが302万トンと最も多い。途上国の貧困と飢餓の代償に、食べ物をいただいているという意識の低さは、宗教観やモラルの問題を越え精神の貧困そのものだと思ってしまう。

これからのシェアリング社会

近所の移動販売のパン工場では残ったパンを店の脇で安く分けている。販売の手間を考えれば営利はほとんどないが、社長と話をすると、まだおいしいし、豚の餌にはもったいない、という答えが返ってくる。これをシェアできないか、と1年ほど前に近所の自立できない人達に配っていた。ある理由で止めたが、こういった活動は、ビジネスで転売する例があったり悪用さたり、誹謗中傷を受けるとすべてが水泡に帰す。食を提供するリーダーの勇気と良心に頼らざるをえないのが今の社会の暗さでもある。

これからのシェアリング社会


気が付くと名護市の社協でもフードバンクを始めていた。生鮮食品を除き賞味期限の長い、米や缶詰類が主流である。担当者はまだ少なくて、と謙遜しているが、災害時の食料確保のシミュレーションにも応用できる良いシステムである。
イギリスではスマホアプリで食物を募り、シェアするフードシェアリング運動が始まっている。(OLIO)サイト

仏教の托鉢を忘れ、ドギーバッグの習慣もなく、貧困をシェアする前に金と時間のビジネス社会に突入した日本は、『もったいない』を育てていく余裕がなかった。
シェアリングエコノミーという言葉は誤解されやすく好きではないが、ビジネスと結びつけると価格競争による質の低下により失速する。

これからのシェアリング社会

ハウスシェアリング、カーシェアリング、フードシェアリングを実現するには、既得権者と対立が起こることはAirbnbやNottecoの例で証明済みであるが、政権が変わっても規制緩和が進んでも実現しない。

日経平均株価を下げず円安を維持するために税金が使われ、借金が増え続けることに何の疑問も持たず、規制緩和が悪徳業者を生んでいく構図は政治批判をしない有権者の問題でもある。
少なくても、これから増え続ける貧困層の若者層や年金世代の老年層が生活するには、暮らしの中にシェアリングの意識が必要となろう。


同じカテゴリー(ビジネス環境)の記事
LCCのビジネス環境
LCCのビジネス環境(2015-04-29 11:43)

WHAT’S NEXT?
WHAT’S NEXT?(2015-03-02 18:11)


※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。