2015年08月03日
中国の変わる水環境問題
8年前四川大地震の直後、昆明市の填池(てんち)に立ち寄った。
昆明市は中国内陸部の常春とうたわれ、海抜1900mの
高原都市の触れ込みだったが、現実は程遠かった。
都市部の空気は排ガスで汚れ、雲南民俗村から
名勝と言われた西山に向かうロープウェイの眼下には
バスクリーン色の填池があり異臭を放っていた。

填池は富栄養化が進み、さながら巨大な肥溜めだった。
その後、JICAの水環境整備事業の援助もあり、
填池周辺の水環境は改善するかに見えた。

国全体を水洗化するには平均汚水量を200㍑/人日としても、
2800億トン、つまり1日に東京ドーム220杯分の水が必要となる。
この結果、中国内陸部の主たる淡水湖は、汚染が進行するか、
水資源開発により干上がるか、短期的に二捨選択の運命にある。
いくら経済は豊かになっても、地方駅の便所では仕切りのない
汲み取り式便所があるのは、計画の構造的な理由がある。

昆明市は600.万人の大都会となり、北京オリンピックを契機に
東南部の流域にある農地・森林は官渡区として開発され、
新空港ができ地下鉄工事が今も進行中である。

その結果、相次ぐインフラ整備と急激な宅地化により、
市内の河川は、黒い汚水は黄土色の泥水に変わっていた。
そして、一旦雨が降ると、河川は急激に増水し、特に
駅周辺は都市水害の様相を呈するようになった。

急激な都市の変化は、更新されなくなったGoogleMapと
航空写真を比べ見ると、その変貌ぶりがよくわかる。

8年前ホテルのあった場所は再開発され、位置すら定かでなかった。
唯一、人のぬくもりを感じる場所でもあった古い中層共同住宅地区の
暗く不衛生な雰囲気の街角は、中心街では消えつつある。

昆明から西に340km、大理の洱海は標高2000mの高原の湖で、
周囲の農用地に囲まれた、川魚料理で有名な土地柄である。
4000m級の山を背景にした農村は、日本の田舎を思い出すが、
ここでも水環境の変化が起きている。

水質検査をするまでもなく、淡水の富栄養化が進み、水辺には
水藻が大量発生し、水泳禁止ではあるが泳ぐ気にもならない。

地元の村民委員会では、食料の重要な供給基地であるために
食品中毒を防ぐ環境スローガンを全面に掲げている。しかし、
このままでは、填池同様の環境破壊が進行していくことだろう。

中国では経済の失速を国内需要で補うために
インフラ整備が至る所で進行中である。
橋脚だけが先行建設され、トンネルが切削され排土が溢れ、
新道建設と道路維持のため山肌は削られたまま捨土され、
いつも河川では骨材採取のために川底を浚渫している。
これが国家景観地区でも節操なく進んでいる。

日本の60年代の高度成長時代と70年代の列島改造時代、
80年代のバブル時代の開発が、中国では今同時に進んでいる。

旅行サイトの虎跳峡
大理の洱海から更に北部に200km、揚子江の上流にあたる金沙江。
かつては金がサラサラ流れると謳われたが、今や開発による黄土色の
濁流となり、虎跳峡では瀑布のように流れ落ち、やがて長江となる。
この危険なほどに雄大な景観に歓声を上げる観光客たちは、
今の中国の姿そのものであるように思える。

現在の虎跳峡
今の中国のリスクは、侵略戦争、経済バブルでもない。
もちろん、爆買い、爆食い、異文化差別でもない。
都市部のPM2.5だけでなく、CO2の排出・吸収のバランスが崩れ
地球環境問題を加速させる、思慮なき開発バブルである。
昆明市は中国内陸部の常春とうたわれ、海抜1900mの
高原都市の触れ込みだったが、現実は程遠かった。
都市部の空気は排ガスで汚れ、雲南民俗村から
名勝と言われた西山に向かうロープウェイの眼下には
バスクリーン色の填池があり異臭を放っていた。
填池は富栄養化が進み、さながら巨大な肥溜めだった。
その後、JICAの水環境整備事業の援助もあり、
填池周辺の水環境は改善するかに見えた。

国全体を水洗化するには平均汚水量を200㍑/人日としても、
2800億トン、つまり1日に東京ドーム220杯分の水が必要となる。
この結果、中国内陸部の主たる淡水湖は、汚染が進行するか、
水資源開発により干上がるか、短期的に二捨選択の運命にある。
いくら経済は豊かになっても、地方駅の便所では仕切りのない
汲み取り式便所があるのは、計画の構造的な理由がある。

昆明市は600.万人の大都会となり、北京オリンピックを契機に
東南部の流域にある農地・森林は官渡区として開発され、
新空港ができ地下鉄工事が今も進行中である。

その結果、相次ぐインフラ整備と急激な宅地化により、
市内の河川は、黒い汚水は黄土色の泥水に変わっていた。
そして、一旦雨が降ると、河川は急激に増水し、特に
駅周辺は都市水害の様相を呈するようになった。

急激な都市の変化は、更新されなくなったGoogleMapと
航空写真を比べ見ると、その変貌ぶりがよくわかる。

8年前ホテルのあった場所は再開発され、位置すら定かでなかった。
唯一、人のぬくもりを感じる場所でもあった古い中層共同住宅地区の
暗く不衛生な雰囲気の街角は、中心街では消えつつある。

昆明から西に340km、大理の洱海は標高2000mの高原の湖で、
周囲の農用地に囲まれた、川魚料理で有名な土地柄である。
4000m級の山を背景にした農村は、日本の田舎を思い出すが、
ここでも水環境の変化が起きている。

水質検査をするまでもなく、淡水の富栄養化が進み、水辺には
水藻が大量発生し、水泳禁止ではあるが泳ぐ気にもならない。

地元の村民委員会では、食料の重要な供給基地であるために
食品中毒を防ぐ環境スローガンを全面に掲げている。しかし、
このままでは、填池同様の環境破壊が進行していくことだろう。

中国では経済の失速を国内需要で補うために
インフラ整備が至る所で進行中である。
橋脚だけが先行建設され、トンネルが切削され排土が溢れ、
新道建設と道路維持のため山肌は削られたまま捨土され、
いつも河川では骨材採取のために川底を浚渫している。
これが国家景観地区でも節操なく進んでいる。

日本の60年代の高度成長時代と70年代の列島改造時代、
80年代のバブル時代の開発が、中国では今同時に進んでいる。

旅行サイトの虎跳峡
大理の洱海から更に北部に200km、揚子江の上流にあたる金沙江。
かつては金がサラサラ流れると謳われたが、今や開発による黄土色の
濁流となり、虎跳峡では瀑布のように流れ落ち、やがて長江となる。
この危険なほどに雄大な景観に歓声を上げる観光客たちは、
今の中国の姿そのものであるように思える。

現在の虎跳峡
今の中国のリスクは、侵略戦争、経済バブルでもない。
もちろん、爆買い、爆食い、異文化差別でもない。
都市部のPM2.5だけでなく、CO2の排出・吸収のバランスが崩れ
地球環境問題を加速させる、思慮なき開発バブルである。
Posted by Katzu at 19:42│Comments(0)
│アジア
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