2012年12月25日

島の宝探し

 名護市中央図書館で『わがまち・わがむらお宝再発見!』
と題する展示が行われている。
名護市55字すべてに指定文化財を、という趣旨で行われている。

島の宝探し

住むまちの宝探しは、まちづくりの初動的手法として定着しつつある。
まちにある文化財を共有の宝物として、守り伝えていくことが
まちのコミュニティづくりにも活かされる。
地元から『ここは何もなくて』という話をよく聞くが、
むしろ、何もないまちの方が最近は魅力を感じる。

人は世界遺産や旅情報に魅かれ、かの地を訪れるが、
それは行く前に大体想像できる範疇にあり、どんな土地でも同じような
歴史で人が住めば、どこかにその痕跡が残っているものである。
史実に基づく地域研究は進んでおり、歴史、自然・文化を見る目を養い、
現地を歩けば、必ず宝物はみつかる。
その存在を知っていても、その土地固有のものだと知らない場合も多い。

島の宝探し

図書館のお宝ノ―トには、子供の絵だけがたくさん書いてあったが、
その子が島を離れ、外から島を見た時、その宝物はきっと見つかるだろう。

 今年の秋は沖縄離島を巡ったが、外部からの視点で島を見ると、
その土地特有の不思議なものに出会う。
それらは、何の指定も、観光案内も、ガイドブックにもない場所にあった。

島の宝探し

 多良間島は、8月踊りと牛と砂糖の沖縄らしさが残る島である。
のんびりとした何もない人情あふれる島であるが、石造墳墓が凄かった。
ウブメ―カーと呼ばれる土原豊見親の墓が有名であるが、他にも、
勝連町に所縁の、琉球芸能の祖と呼ばれる平敷屋朝敏の墓もあった。
火番盛(宮古遠見)周辺は津波からも逃れ、古い墓が点在していた。
自然の岩をくりぬき埋め込んだもの、アーチ型に岩を組んだものなど、
その石造技術と設計、景観は、国内唯一のもので、目を見張るものがあった。
南洋に至る石像デザインとの共通点も見られた。

島の宝探し


 石垣島の於茂登岳は沖縄の最高峰であるが、
沖縄では珍しく山岳信仰の歴史もあり、霊山と呼ばれる山である。
その中腹の標高200m付近は、イタジイの照葉樹林が広がる。

島の宝探し

この周辺は花崗岩が点在し、岩と木がせめぎ合い、木根が岩を覆う
〝締め殺し〟の様相となる、不思議な森であった。
日本の離島では、初めて目にする景観であった。

島の宝探し

山道から少し外れた所に、突然、人工的な石積が現れた。
ここも木根で覆われ、さながら、アンコールワットのタ・プロ―ムを
発見したような気になった。
恐る恐る内部に入ると、1ルームで赤い土壁に覆われていた。
窯のようにも見えるが、陶器片はなく、居住跡か炭焼き小屋だったのだろうか。

島の宝探し 


信仰の対象となっている頂上付近の大石群は、南洋のストーンモノリスにも
似ているが、石には文字か文様が彫り込まれていた。

島の宝探し

知識不足で文字は判読できないが、その中に数字のようなものもある。
他愛のないことかも知れないが、きっと知っている人はいるだろう。

島の宝探し
          YK352?のような

 観光客のこない何もない所にも、島の魅力は転がっている。
島の宝探しは、物を作らず育てる観光手法や、自然と共生する
エコツーリズムにも役立って行くはずである。

自然・歴史・文化あらゆる興味は、何気ないものの魅力を引き出す。

一方で、宝物探しの悪い例は、すぐ身を切り、売り出すことや、
少し駐車場を整備しただけで、入場料を取り
私物化しょうと考える島人が多いことも事実である。





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