2017年09月19日

沖縄の観光を取り巻く環境

沖縄の観光を取り巻く環境

 沖縄の観光業界は好調に発展し、新しいリゾートホテルの開業も目白押しで、その中心にいるのは海外からの観光客である。沖縄の複雑な歴史と特別な環境は、新しい解釈がなされ再生されていく。ハクソーリッジ、旧核ミサイル基地、やんばるの森からガマ、御嶽に至るまで観光スポットとして次々に注目され続ける。県民の多くはその詳細を知らず、突然の騒動に驚くのはむしろ地域住民の方である。

沖縄の観光を取り巻く環境

7月よりワルミバンタが立ち入り禁止になった。集落付近は元の何もない作業場と住宅になっていた。やはりというか、今まで沖縄の人でさえ知らなかった(入れないと思っていた)所がなぜ観光客が押し寄せるようになったのか不思議でもあった。

備瀬の岬は観光客が相変わらずで、その多くは外国からの観光客である。シュノーケリングポイントとして一度発信されると、5年前の情報でも美しいサンゴ礁と期待されてしまう。実際、サンゴ類は踏みつぶされてしまい、数年前と比べるとさらに痛ましい。

沖縄の観光を取り巻く環境

もっときれいなスポットもあるが、シャワー、駐車場、道路が整備されていない。ダイビングだけでなくシュノーケリングでさえ観光の名がつくと、本部のゴリラチョップのようにコンクリートブロックで囲んだ公園を整備したうえ、シャワーのある施設が必要になってしまう。

沖縄の観光を取り巻く環境


 備瀬の集落を走ると、ワルミの看板を見かける。観光業者が新たな観光スポットとして紹介してきたことがわかる。観光業者と地元地権者との話はどうなされたのだろう。地元の観光施設のオーナーにその話をすると下を向いて黙ってしまった。

 沖縄の観光の歴史は、環境の切り売りの歴史でもある。開発者と土地所有者が時代の流れの中で、いつも沖縄の海岸線を変えて行った。本土返還、海洋博、サミットの開催、リゾート法の制定、世界遺産の登録、様々な時代背景が工事を後押しして行った。

沖縄の観光を取り巻く環境

一概に開発業者が悪いのかというと、観光経済を牽引した面がありそうばかりとは言えない。沖縄には70年代の離島ブームの当時から、観光客が集まるとその土地の入場料を徴収したり、有料駐車場を建設するという悪い慣習がある。石垣島で民地のサガリバナが有名になり観光客が集まると、途中のあぜ道の土地所有者が通行料を取るということがあった。なぜか太平洋の島々では、同じような事例に何度か遭遇した。

沖縄の観光を取り巻く環境
   ポンペイ・ナンマドール遺跡

 どうするべきか、答えは二つに一つである。個人の土地として立ち入り禁止にするか、公共のものとしてのインフラ整備、入場料の徴収、祭事など特定日の設定、入場数の制限を行政機関、地権者、観光業者が三者調整を行い入場させるか、である。その調整役を担うのが観光コーディネーターであるが、日本では認知されていない。
ワルミバンタの例は、良心的な口約束があまりに多くの観光客が押し寄せたために招いたもので、営利に走らなかったことが救いであるが、当面は出入り禁止にして方策を検討していくというのは良い選択だったのかもしれない。

沖縄の観光を取り巻く環境


ごみのポイ捨てなど、直接の原因を作ったのは外国人観光客であるが、彼らがどの観光地や店に集まるかを知る方法はたやすい。Googleマップで施設を探し内容や評判を見て、中国のウェイボーで沖縄の観光情報を検索するだけで、今どこに外国人観光客が集まっているかがわかる。今や日本人向けのガイド本や食べログではなく、小さい不確かな情報が独り歩きする時代である。地域に知れた老舗の有名店よりも、隣の店情報を提供した店の方に外国人観光客が集まる様は滑稽でさえある。これを逆手にとれば自ずと、その情報源に近づける若い人の方が成功する確率が高くなる。ただ、ワルミの事例のように経験や調整能力がないと問題が起きる。

沖縄の観光を取り巻く環境
      浦添ハクソーリッジ付近

外国人観光客のマナーの悪さばかりがクローズアップされるが、彼らから教えられることもあり、いずれは理解されると考えている。むしろ、不動産の買い占めがこれ以上進むと、次の規制緩和や社会の変化をきっかけに沖縄の観光と環境が大きく変わってしまう事を懸念している。

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