2017年11月15日

ミーニシと小夏日和

台風22号が去り、ミーニシ(新北風)が吹き始めた10月31日、名護の最低気温は20℃を切った。次の日、その寒さに驚いた市内屋部川沿いのサクラが咲いていた。

ミーニシと小夏日和


内地では小春日和の狂い咲きと言うが、沖縄では通常の季節のルーティンであり、気候変動により開花が早まった結果でもある。
山のヒカンザクラの芽は心なしか赤くなり、もう開花まで2か月を切っている。

ミーニシと小夏日和


 沖縄では四季の移ろいは乏しく、山の紅葉も見られず、4寒3温の体感だけが冬に近づいたことを知らせてくれる。秋の晴れた日、沖縄では最高気温が25℃を越える夏日は小夏日和と呼ばれる。


やんばる国立公園に続く名護市の里山に行くと、最後の夏を惜しむようなオオシマゼミのケーン、ケーンという金属音が耳うるさく響いていた。

ミーニシと小夏日和


秋の風情は、へゴやアカバナの色と景観に打ち消される。

ミーニシと小夏日和


湿気も虫も減り静かになった沢に降りると、夏にはない快適さに驚くが、水面に落ちる枯葉は茶色で、死を迎える冬を前に艶やかに色づくこともない。

ミーニシと小夏日和



道端には旅する蝶で有名なアサギマダラがいた。これは越冬を控えたリュウキュウアサギマダラか、7月の蔵王にもいた渡り蝶のアサギマダラなのかはわからない。

ミーニシと小夏日和


森に分け入ると日本最大の蝶オオゴマダラが数匹、木の葉の裏側に集まり交尾しながら、忙しく飛び回っていた。

ミーニシと小夏日和


 この森の魅力は、物珍しい個体の多さにあるが、同じ景観や希少動物に見あきても、いつも違うディテールを見せてくれる。


ミーニシと小夏日和


奇怪で淫靡な寄生植物や虫には驚かされる。けもの道には20cm近い日本最大の蜘蛛、オオジョロウグモが巣を張り行く手を遮る。

ミーニシと小夏日和


森の色が少ないのは、多くの生物が擬態と保護色を使っているせいでもある。
木の裏から瞬間移動するキノボリトカゲは緑色のはずだが、見つけたトカゲは茶色でなかなか確認できなかった。リュウキュウルリモントンボは、アオとキイロの雌雄別色なのと同じ理由かもしれない。

ミーニシと小夏日和

どこにでもいるようになった要注意外来生物のアフリカマイマイは、石のように固く重い殻を背負い木にも登る。その近くには数ミリの準絶滅危惧種のアオミオカタニシがいた。

ミーニシと小夏日和


森の木をコツコツと叩く音がする。この付近にはノグチゲラはいないが打撃音も小さい。木陰で見えづらかったが、同じキツツキの仲間のリュウキュウコゲラだった。

ミーニシと小夏日和


 森のディテールの極め付けは、葉の上に咲く不思議な花で、春に博物館員から教えてもらった。『琉球花筏』という粋な名前で、ハナイカダの固有種だという。別名『嫁の涙』という意味深な花である。
秋になっても、この花はアニメキャラのような形になり、まだ咲いている。

ミーニシと小夏日和


やんばるの里山は、冬を迎えることなく春の準備をするもの、春を求め海を越えて来る者、営みを終え最後の夏を謳歌する者。雪囲いも冬着への交換も急ぐことなく、ゆっくりと冬に向かう生物たちの姿がある。

ミーニシと小夏日和




タグ :里山の環境

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