2011年10月06日

緑の海パラオ松島

 沖縄の版画家・名嘉睦稔が対談で、海と山は表裏一体だと語っていた。
これは同感で海を知れば知るほど山の存在を感じるようになる。

緑の海パラオ松島

 日本人がパラオ松島とよぶIWAYANA BAYは、コロール島の南にある。
大小30余りのロックアイランド群が奇景観を構成する。
浅瀬と淀んだ水のためダイビングに来る人は少ない。
ところが、ここはパラオの自然環境を閉じ込めたような水域なのである。
コロールに住んでいると、排気ガスや騒音、ごみの異臭もあり、
外はマングローブのため意外に海の存在を感じない。
マングローブは干潮時は泥臭く、廃棄物も目立つ。

緑の海パラオ松島

 海からコロールの街を眺める。
すると1万人の人間が暮らしているとは思えないほど、緑の森が広がっている。
マングローブの林を海からカヤックで進むと、
ひんやりし、時々実の落ちる音が聞こえる。
水は泥で濁っているが、海と街の間のクッションとなり、
街の汚れを自浄していると感じる。
林はカニや貝類トビハゼ類ワニなどが住む、独特の生態系を形成する。

緑の海パラオ松島

 南の湾内に行くに従い、藻が増え、海底の砂も白くなり海の色も変わっていく。
島だけでなく海も緑一色の異空間が現れる。
海も山も一体となった緑の空間。
ここは海山が一緒に呼吸する生きた自然環境で、
自分だけの体が浮いてだんだん溶け込んでいくような錯覚に陥る。

緑の海パラオ松島

海に潜ると、昨日まで降った雨のせいか、表面は汽水帯になって塩分も少ない。
この汽水帯が地上の養分も運び、植物やプランクトンの栄養となる。
ロックアイランドは石灰岩質であるが、長い年月の末に下部が塩分で溶解している。
ここは幼魚が育ち自然に守られる、安全地帯である。
タイマイが顔を上げると、急速に潜行して行った。

緑の海パラオ松島

ここには太古の歴史の鍾乳洞があり、石筍が発達している。
個人的にここを緑の洞窟と名付けた。

緑の海パラオ松島


 さらに、南の湾口に近づくに従い、海の色は青が強くなり、
透明度も増しサンゴが多くなる。サンゴは呼吸しCO2を排出するが、
炭酸カルシウムを蓄え結果として、海藻とともにCO2を吸収する。
この付近は海藻を主食にするジュゴンが、何度か見られたと言う。

 さらに数キロ南、マラカル島の南の側では海流も早く、
サンゴがよく育つ海域になる。
1998年のサンゴの世界的な白化現象でパラオも、2/3のサンゴが
死滅したと言われているが、除々に回復している。
せいぜい水深3mほどの瀬にエダサンゴ、テーブルサンゴが多く、
小さなスズメダイ、ツノダシ、クマノミなどがカラフルに群れていた。

緑の海パラオ松島

 IWAYANA BAY付近は都市の近郊にありながら、
コンパクトに自然の循環が保たれた、貴重な保護区域になっている。
この日この海域にいたのは、4人だけだった。
カヤックの目線で見ると、茶色の海、緑の海、青の海の変化が、
色だけでなく、水の匂い、温度、味が変化するのがわかる。

この海域に関連して仕事をする、若い上杉さん、佐藤さんに
ここの環境教育を任せたい。




同じカテゴリー(海の環境)の記事
台風が去った海
台風が去った海(2017-09-26 20:56)

辺野古に想う
辺野古に想う(2015-03-15 12:44)


Posted by Katzu at 05:06│Comments(0)海の環境
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。