2012年06月18日
沖縄のLRT計画
4車線で渋滞する国道330号をLRTが走る。
このような状況を思い浮かべる沖縄県民は、
はたして何人いるのだろうか。
全国の中心市街地活性化の取り組みとして、
人と公共交通機関を優先させた、トランジットモールとLRTの導入があげられる。
国交省が導入支援策を提示し、各地で検討、実施され始めている。
この中で最も現実味を帯びてきたのが沖縄のLRT計画である。
詳細
昨年、パーソントリップ調査に基づく乗降客予測とLRT計画案が発表された。
沖縄中南部エリアの人口密度は2,300人/㎢と高く、
道路の混雑度は全国平均の1.2倍、
車利用の機関分担率は80%と同じく1.2倍、
道路の投資額は1.7倍となっている。
現在も、費用対効果の低い道路整備がつぎはぎ的に、各地で進んでいる。
LRT計画の那覇・うるま路線の建設事業費は、400億円と試算された。
数字的には公共交通機関の導入に必要な、
需要と供給のバランスが証明されたような結果になった。
うるま市選出の県議候補の多くは、うるま市までの鉄軌道の延伸を訴えていた。
しかも話題はLRTではなく、専用鉄軌道の話に進んでいる。
軽便鉄道の夢を乗せ、交通渋滞の切り札にと考え形を変えながら、
那覇観光のシンボルになった、ゆいレールの導入経緯とは時代が変わった。
計画路線の一つに当たる与那原のマリンタウンでは、
LRT計画が公表されている。
災害に強い公共交通を整備する視点から、
海沿いの危険な既存ルートを山沿いに路線変更し、
しかも採算の関係で、BRT(専用バス)になろうとしている三陸鉄道と比べると、
なんと平和で楽天的な計画だと感じてしまう。
全体的には、用地確保と補助金が決まれば、すぐ計画が進みそうな情勢だ。
しかし、ここには大きな視点が欠如している。
国交省の提案する次世代型路面電車システムのLRTにするか、
専用鉄軌道にするかの議論より重要なのは、
公共交通機関をなぜ導入するかの議論であり、
住民レベルの意見交換が未成熟である。
そもそも、公共交通機関導入の利点は、
投資額を含めた低コスト、
低エネルギー、
バリアフリー、
安全定時運行、
環境負荷の軽減であり、
LRTの整備計画もこのような視点から進められる。
利用者に理解されないままに進んだLRT計画は、ただの箱ものになる。
沖縄のバスの機関分担率は6%と低い。
バスの公共性の利点が活かされず、バス特有の低サービス、高コストから
経営を圧迫し路線が減るという悪循環を繰り返している。
那覇市からうるま市以遠なら、バスの往復運賃より、
レンタカーの方が安いのが現状である。
沖縄では、車に依存する社会特性が、
公共交通機関の発達を阻害してきた歴史経緯がある。
バスがLRTに変わったとしても、この状況はなんら変わらない。
250m離れたコンビニに、徒歩か自転車を使わない交通特性の地域で、
駅間500m以上の電車を走らせても、人は利用しない。
ここから議論を始めなければ、公共交通機関の導入は論じられない。
専門家の意見が尊重されず、政策寄りの報告書が作られ
施工に至るのが、今の日本の現状である。
Posted by Katzu at 15:14│Comments(0)
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