2012年12月09日

国境の島

国境の島

 尖閣諸島に最も近い島は、与那国島、西表島、石垣島で
ほぼおなじ約150km離れている。
石垣島の北端の平久保崎灯台に立つと、その寂寥たる景観から、
地の果てに来たという印象を受ける。
東の多良間島まではたった35kmで、同じ島内の石垣市までの
距離とほぼ同じで、島影が見えることがあるという。
ここからはさすがに小さな尖閣諸島は目視できない。
この広い海には国境などはなく、どこまでも
地球が丸くあることを感じさせてくれる。


より大きな地図で 先島位置関係 を表示

 国境の島というと最西端の与那国島があるが、台湾までは100kmと近く、
晴れた日は台湾が見え、夕日は海に落ちない。
密貿易で栄えた時期もあるが、文化・歴史的には黒潮本流が
あるため、台湾高砂族との共通性はあまり見られない。

国境の島

石垣島と台湾とのつながりは深く、台湾からの帰化人が
石垣島の社会に与えた影響は大きい。
名蔵のパイン農園をはじめ、市内の商人もラー油で有名な
辺銀食堂のように、現在もすっかり石垣島に溶け込んでいる。

国境の島

そもそも、台湾は日本領であったため、宮古・八重山では
台湾の大学を卒業した知識人も多い。
むしろ明の朝貢以来、最近までは中国本土の存在は薄かった。
今回の尖閣問題が起きる前は、新空港の3月開港もあり、
中国の観光に対する地元の期待は高い。

国境の島

 海岸に行くと、近い中国を意識してしまう。
70年代にはオイルボールの漂着があり、
沖縄近隣の砂浜が汚染される騒ぎがあった。
しかし、あの当時は未踏の海岸でさえ、海外からのゴミは少なかった。
先島のビーチコーミングというと、珍しい造形物をさがすイメージがあるが、
最近はむしろゴミの多さにあきれてしまう。
本島の東海岸に比べ、特に八重山地方は漂着ごみが増えている。

国境の島
          西表島上原

 近年は特に、人口も暮らしも成長する中国からのゴミが、
かなり多く漂着するようになった。
海洋漂着物対策の国際的な取り組みは、
NOWPAP(北西大平洋地域海行動計画)に示されているが、
漂着ごみの国際法上の規制はない。

 ビーチクリーン作戦が沖縄県下で行われているが、
宮古・八重山に関しては、その総量が多く、海水浴シーズンに限っても
大変な人力を必要とするので、放置されている箇所も多い。

国境の島
          宮古島島尻

この平久保海岸でも2日間に渡り、ビーチクリーンが行われた。
2日目は雨で中止になったが、地元の有志だけでは
この広大な海岸の管理清掃は不可能である。

国境の島

 石垣港には観光には似つかわしくなく、海上保安庁の艦船が常住している。
最近の領土問題が特に引き金になっているが、
今度は北朝鮮のミサイル発射失敗時の迎撃のため、
PACK3の配備が慌ただしく進んでいる。

国境の島

 そこには海洋廃棄物をなくす立場など、全く入り込む余地がない。
国境なき海洋環境を守るという行為が、核なき世界をつくる位、
高尚で、手の届かないところに行ってしまうことが恐ろしい。



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Posted by Katzu at 21:04│Comments(0)海の環境
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