2013年01月18日

夢の科学と悪魔の発明

 現代の物質社会を豊かにしてきた夢の発明は、
自動車・ロケット・原子力・コンピュータと言われる。
自動車は個人の移動を自由にし、物流革命をもたらした。
ロケットの開発は宇宙開発を進める原動力となり、
高速移動を可能にするジェットへ受け継がれた。
原子力は自然界にない新しいエネルギーで、
人類に輪廻の繁栄をもたらすものであった。はずだった。

その後、原子力は原発事故と核廃棄物の処理問題が起こり、
核と結びついたロケットは安全保障の脅威となり、
CO2を排出する自動車は、温室効果ガスの30%に当たる地球温暖化の
主要因となり、時に凶器にも変貌する。

夢の科学と悪魔の発明

 100年以上前、フランスのジュール・ヴェルヌは、古典SF小説『悪魔の発明』で、
空中に閃光を放ち、物を破壊する新兵器を描いた。
あたかもそれは、原子爆弾か核弾頭ミサイルであった。
小説では、世界征服の野望はフランスの愛国精神で救われるのだが、
現代では、フランスは原子力推進国で、原子力技術の最先端を行くのは
皮肉であろうか、暗示であったのだろうか。

 エネルギーシフトが叫ばれる現在、過去の発明と開発の反省を踏まえつつ、
多くの科学の夢が産声をあげつつあると感じる。

夢の科学と悪魔の発明

 NASAの開発したヘリオスは、太陽電池と燃料電池を電源とする無人の
ソーラープレーンで、成層圏を飛び続けるソーラープラット計画の先駆となった。
この開発は前記20世紀型科学開発に対するアンチテーゼでもあり、
成層圏からのデジタル放送だけでなく、地球環境調査の利用にも大いに期待され、
何よりも夢があった。
この機は2003年に墜落してしまったが、その後、幾つかの民間企業が開発を進め、
2010年にイギリスのゼファ―が7日間連続飛行を成功させた。
しかし、それは無人偵察用の軍事目的のプレゼンのためだった。

夢の科学と悪魔の発明

 JAXAが調査研究を進めている宇宙光発電は、
夢のある究極の再生エネルギー発電である。
そのキーワードとなるのはソーラー発電衛星(SPS)とマイクロ波送電
(Microwave Power Station)でNASAがすでに理論実験を行っている。
                      IEEE Micro Wave Magazine: 2002

 無尽蔵の自然エネルギー、発電量、輸送コスト、安定供給、環境への影響など、
どれをとってもバラ色で、宇宙開発にも、経済発展にも明るい未来が描ける。

 一方で、宇宙開発は軍事目的で進歩してきた一面もある。
太平洋戦争当時の日本のロケット技術は、ドイツとの技術共有により、
アメリカ、ロシアをしのいでいた。

夢の科学と悪魔の発明

ヒトラーの考案した悪魔の発明には、ヘリコプター、原子爆弾、ミサイル、毒ガス、
スペースシャトルの原型となった宇宙爆撃機などがあるが、
いずれも科学の最先端をいくものであった。
その中には、宇宙空間で太陽エネルギーを巨大宇宙ステーションに集め、
地上に照射するという、現在の宇宙光発電のような兵器もあった。

 新エネルギーの開発は、深海のメタンハイドレードの掘削にしても、
オイルシェール、シェールガスの採取にしても、環境破壊が懸念される中で、
科学技術の進展と安全性の確保が最優先課題である。

科学の進歩、軍事転用、経済発展は連鎖して進むことを、
倫理規定だけでなく、科学技術者自身、自覚すべきだろう。

 転じて一般の人々は、原発事故の現実に遭遇しても、
原発反対派から過激な集団が現れることなく、
このエネルギー国難にあっても、
尖閣諸島の油田開発を叫ぶ人がいない日本は、
なんと大人しく平和な国なのだろう。




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Posted by Katzu at 12:11│Comments(0)原発
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