2013年08月20日

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 やんばるの海は、その森と相似して豊穣な生態系を有する。
湿気を含んだ空気は、山に雨をもたらし、豊かなやんばるの森を形成する。
谷川は養分の含んだ水とともに直接海に注ぎ込む。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

浅瀬では生物が育ち、サンゴ礁は二酸化炭素を取り込む。
沖縄本島は、住宅地・ゴルフ場・農地の開発が進み、海の自然環境は失われて行ったが、
開発の行われていない北部の海は透明度も良く、魚影も濃くサンゴも生育している。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 サンゴが死滅して久しい中南部の海岸では回復の兆しはあるが、群生地を探すのは容易ではない。 
北部の海に入るとその違いは歴然で、複雑な自然地形と生物の多様性に驚いてしまう。
特に山域に開発・開墾地の少ない地域は、東海岸は平良湾以北、西海岸は名護市の羽地湾以北が、
赤土や農薬による環境悪化の影響やオニヒトデの発生も少ない。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 辺戸岬近い茅打ちバンタと呼ばれる岩礁付近では、
海人が大きな魚を突き、丁度上がってきたところだった。
エントリー場所を聞き、海岸線を北に歩き岩場を超えると、
そこの入り江は、色とりどりのサンゴが光り輝く海だった。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

素潜りで海底に潜り、かけ上がりのサンゴ畑を過ぎると、
リーフはすぐにドロップオフになり、グランブルーの世界が広がっている。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

透明度も良く、海底から見上げると、
太陽と青空と雲をバックに、稚魚の群れが通り過ぎて行った。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

魚影も濃く、ドロップオフの下からは多くの魚が湧いてきた。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 岬の東側の太平洋岸は少し違った様子を見せる。
反対側の伊佐浜は、サンゴ礁が発達していたが、現在は岩礁となり
リーフエッジ付近は入り組んだ地形で、波が打ち付け水流がある。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

岩にハナヤサイサンゴが張り付き、コブシメや大型の魚類が訪れる。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 辺戸名の海岸はサンゴの白浜で、礁湖内にサンゴが発達していたことは
容易に推測できるが、一度打撃を受けたサンゴは回復に向かっていた。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

浅瀬の藻類の砂地を行くと、白化したサンゴがあり魚類は少ない。
岸から200mほど先のリーフ近くに行くと、水深3mほどのところに
突然色とりどりの小型の卓上サンゴが現れ驚いてしまう。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

すでに本島では珍しい光景であるが、なぜか魚が少ない。
良く見ると、多くのサンゴが白化しているのであった。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 8月に入ってからの沖縄名護の平均気温は29.8℃で、
観測史上最も高い値となる可能性が高い。
降水量は40mmと例年の10%に満たず、やんばるの森の貯水ダムは
西日本ほどではないが、貯水率が50%を切るダムも多い。
ダムには、本来の谷川の様に自浄しながら養分を運び、水温を調整する機能がない。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

この影響もあり、リーフ内の海水温は30℃を超える日が続いた。
これは、1998年に起きた全世界的なサンゴの白化現象の状況に似ている。

 リーフ内の小魚は流れの速い海域か、深く温度の低い水深に行ったのだろうか。
リーフエッジ近くの水深5m位のかけ上がりでは、サンゴの白化の影響はまだ少ない。

やんばるの豊穣の海とサンゴの白化

 沖縄の海の姿の変貌に落胆し続け、もう潜りたくないと思ったあの時以来、
ここ10年ほどはサンゴ礁の再生の兆しは確かにあった。
地球環境の変化の振幅が大きくなり、自然に接する感動と落胆と希望が、
交互に繰り返されるスパンが短くなってきた。

 元に戻ることは容易ではないが、同じ想いを繰り返したくない、
残しておきたい、少なくとも記憶にとどめておきたい。



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Posted by Katzu at 17:16│Comments(0)海の環境
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