2015年01月05日

海外で知る和の心景

海外で知る和の心景

 正月、雪を踏み締め街を歩いて行くと、近くの神社に灯篭が灯っており、
参道を進み境内に入ると、本殿に向かい自然に手を合わせ、焚火に当たり
宮司と少し立ち話をしたあと、また杉の参道を歩いていく。

海外で知る和の心景

正月という日本人にとっては非日常的な宗教行為でありながら、
日常的な感覚ですんなりと入ってしまう。

日本的だと感じるのは、むしろ海外生活や旅行に慣れ始めた頃である。


海外で知る和の心景

 ところ変わって、昨夏の台湾の花蓮紅葉温泉。
早朝、廊下から足音が聞こえ、母の声に起こされる予感がして目が覚めた。

せせらぎの音、畳、布団、ふすま、木の廊下、障子の彩光、外の草いきれ。
実家は川と堰にはさまれ、静かな朝はせせらぎの音も聞こえた。
完全に実家の夏の朝と勘違いしていたのである。

海外で知る和の心景

伏線は前日からあった。瑞穂駅前近くの食堂は同じ旅館の家族で、
夏休みの子供たちが、店を手伝い食事を運び世話を焼いてくれた。

海外で知る和の心景

 暑い橋の上で歩いていると、お爺さんのバイクに拾われた。
夜は団体客がうるさいからと、部屋に夕飯を持ってきてくれた。
旅館は大正8年に警察療養所として設置された平屋木造の建物で、
山の見える露天風呂や内湯も、懐かしい日本を感じさせてくれた。

海外で知る和の心景

帰りは2km歩いて終点のバス停から帰るつもりだったが、
日本語の達者な御主人が声をかけてくれ、駅まで送ってくれた。
お孫さんへのアイス代と渡そうとしたチップは、頑として受け取らなかった。
風景以上に、日本人の心を呼び起す家庭的な情景がなによりも嬉しかった。


海外で知る和の心景

 すわ、かわり海を渡ったニューヨークのタイムズスクエア。
歩道の誘導ポットは、ススキの植え込みであった。
月と餅が似合わない風景の、不自然なバランス感覚に戸惑い驚く。
都会に自然の造形を取り込むのが得意な、日本人の発想のように思えた。
日本人的感覚で、ススキ野を彷彿させる遊び心でもなさそうだ。
マンハッタンは島であるが、一歩郊外に出ると
周囲の海岸沿いは今もススキの原が広がっている。

海外で知る和の心景

 日本的な勘違いは海外ではよくあることである。
台湾のある和式温泉旅館では、檜風呂は高級感があり嬉しくても、
相容れない慣習がそれを打ち消してしまうこともある。

海外で知る和の心景


 紅葉は日本特有の景観と感じることもあるが、色彩的には紅の割合が多い
特徴はあるものの、燃える秋は冷・寒帯地域ではよく見かける景観である。
緑の少ない鉄とコンクリートの、シカゴ摩天楼の一角に植樹された黄葉は、
秋を思い起こす単なるオブジェではなく、万国共通でホッとさせられるものがある。

海外で知る和の心景

 フォルム以外の何か人と関わりのあるものを求めながら、街を歩き
日本的なエントランスを見つけると、興味が湧きつい中を覗いてしまう。

海外で知る和の心景
      Google :Mountain View Tetsuwan Atom Cafe

IT産業と日本のアニメを組み合わせたコンセプトに驚きつつも、
日本の科学と文化が、理解され浸透していくことがただ嬉しい。




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