2016年05月07日

暖流と寒流が運んだ仮面

暖流と寒流が運んだ仮面

石垣島のアンガマと西表島節祭のオホホと宮古フツが、
黒潮に乗って辿りついたような韓国のグッタルノリ。

暖流と寒流が運んだ仮面

韓国安東市の重要無形文化財、河回別神グッ仮面劇
(ハフェマウル グッタルノリ)は、世界遺産の河回村に
12世紀の高麗の時代から村民に伝えられ演じられてきた。

暖流と寒流が運んだ仮面

河回村は洛東江が迂回する孤島のような自然環境に形成された集落で
街の形態も沖縄の離島と同じく村の中心から放射状に広がっている。

暖流と寒流が運んだ仮面

この劇の特徴は、強い者と弱い者、賢者と愚者、支配者と被支配者、
男と女、自然と超自然の対比で各場面が演じられる。

暖流と寒流が運んだ仮面


演じられる役どころは個性豊かだが、南洋の仮面劇や八重山の祭りの
ストーリーと同じ役どころを思い出してしまう。

暖流と寒流が運んだ仮面
          石垣島アンガマ

賢者のソンビやヤンバンは石垣島のウシュマイに、守り神のカクシや
ブネは八重山地方の来訪神ミルクに似ている。

暖流と寒流が運んだ仮面
         西表島祖納節祭

破戒僧のチェンや屠殺人のぺクチョンは、西表節祭のオホホや
エイサーのチョンダラーと同じく、祭りを盛り上げるトリックスターである。

暖流と寒流が運んだ仮面
        西表島星立オホホ


そして、劇中で第一音節が強調される韓国語は、イントネーションと
言葉が独特な宮古フツ(弁)となぜか似ている。

琉球と朝鮮の関係は歴史的に深いつながりがある。
中国を目指す交易船の行先は、黒潮に捕まると渤海湾に向かわず
一旦対馬海流に乗ってしまうと、済州島から朝鮮半島方面に向かう。

暖流と寒流が運んだ仮面

これまであまり語られることが少なかったのは、日本に対する
琉朝のお互いの立ち位置がゆらいでしまうからでもある。

最近、沖縄に韓国人旅行客が増えている背景が見えてくる。

他国の文化までをすべて自分がオリジナルと主張する韓国の
知識人は困りものだが、仮面の伝来にどう反論するのだろう。
一方で、神社の鳥居は渡り鳥を迎え収穫を祝う韓国のソッテである
という説は、農業文化の伝播を考えれば十分影響を受けたと思う。

暖流と寒流が運んだ仮面
        韓国慶州

沖縄の来訪神は南洋から訪れたものであるが、あまねく太平洋
ばかりか、インドシナ内陸にも同様の仮面や祭りが伝わる。

暖流と寒流が運んだ仮面
        ミャンマーヤンゴン

ミャンマー内陸部でも、街なかの祭りに波照間のフサマラと
同じような南洋人の意匠の踊りがあった。

暖流と寒流が運んだ仮面
         ミャンマーモンユワ


一方、ロシアから間宮海峡を下るリマン海流は日本海側に至る。
この海域にも海流が多くの生物や漂流物を運んできた。

今年2月、宮古のパーントゥなど日本の『来訪神:仮面・仮装の神々』
の行事8件がユネスコ無形文化財候補となった。

暖流と寒流が運んだ仮面


その中の日本海の来訪神は男鹿のナマハゲとともに
遊佐のアマハゲが挙げられた。
秋田の男鹿に対応して、遊佐町には女鹿という集落がある。

暖流と寒流が運んだ仮面

この地域全般に伝わるナマハゲ(アマハゲ)の祭りは、
赤面の鬼が主人公であるが、最近、この赤鬼は海で遭難し
山に逃げ隠れたロシア人であるという説が注目されている。

暖流と寒流が運んだ仮面


沖合に寒流の流れ込むこの海岸の集落は、
夏の光が輝くまでは閑散として物寂しい。

秋田美人のルーツは白系ロシア人という説は眉唾ものであるが、
この時期美味の厳ついカナガシラを見ていると、海を渡ってきた
ロシア人のナマハゲ説もまんざら嘘ではない気がしてくる。

暖流と寒流が運んだ仮面


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Posted by Katzu at 17:32│Comments(0)アジア
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