2011年09月16日

守られたホタルと変化した環境

 守られたホタルと変化した環境

 山形市東沢にホタルの里がある。
環境庁の日本のふるさといきものの里百選になっている。
梅雨の7月12日に行った時は、人と車が大勢で、
保存会の人はライトを消せとか、フラッシュをたくなとか、
ホタルに触るなとか、暗闇の中でのやり取りがあった。

守られたホタルと変化した環境

1か所、沢に転げ落ちる箇所があるので危険だし、
観光地になった途端に自然環境は変化していく。

 この場所がホタルの里になった理由は3つある。

1、こつこつ積み上げた個人の努力と熱意
2、里づくりの地域サポート
3、蔵王ダムの建設と地球温暖化

 昭和30年代にこの場所は、年に一度川遊びに来ていた所で、
水温は冷たく、白い石が一面を覆い、ホタルに適した環境ではなかった。
むしろホタルは下流域か田んぼの小川に生息していた。
昭和40年代にできた蔵王ダムの影響で、川は水量が減り、
水温も上がっていった。
コケや葦の茂る馬見ヶ崎川の中流域では多くのホタルがいた。
一度、ホタルダマリがぶつかるのを見たことがある。
数は減ったが、現在では蔵王インター付近にも生息している。

 今回改めて現場を歩く。
現在の東沢の環境は、30年前の下流域の環境に似ている。
ブラックバスが生息できる沼のような河川環境の変化は、
蔵王ダム・林道の開発と地球温暖化によってもたらされた。

守られたホタルと変化した環境

この周辺は、豊かな生物をはぐくむ広葉樹林が伐採され、
針葉樹の植林とともに、その管理林道が整備された。
林野庁主導の針葉樹林管理施策は、高度成長時代の材木需要を
見越したもので、現在は利権の継続になっている。
本来あった広葉樹林を、守り育てるべきであった。

 環境教育の名のもとに、自然を守ることは大切である。
しかし、人間が自然に手出して自然を作ろうとした時に問題が起きる。
ホタルを増やすことは東京の丸の内でもできる。
問題はホタルばかりか餌のカワニナを他の河川から持ってきたり、
違う池の環境で育てることで遺伝子撹乱が起きることである。

 実は4年前、ビオトープ(復元された野生生物空間)を
都市公園に設計し、失敗した苦い経験がある。
かつて農業水路は農家が管理し、ホタルも生息していた。
開発が進み、管理形態が都市公園になった途端、
地元の懇切な管理から離れ、泥上げもなく、水量管理が難しいため、
水を止める時期もあった。

守られたホタルと変化した環境

 環境教育に利用したり、魚やタニシも生息したが、
白サギに食べられたり、ホタルに関しては遺伝子撹乱の問題に直面し、
それ以上は作れなかった。
何より地元のサポートと、率先するリーダーがいなかった。

 人間が手を加えなくても、生物環境は変化している。
沖縄には固有種を含め8種類のホタルがいるが、
いずれ本土にも上陸していくかもしれない。

だからなおさら、自然に手を加えるのは難しい時代になっている。




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