2011年12月20日

環境アセスメントと開発

環境アセスメントと開発
 地元紙を賑わす沖縄の環境問題は、普天間基地の辺野古移設
泡瀬の干潟埋立高江のヘリパッド建設である。
いずれこの問題に触れ、踏み込まなくてはならないと覚悟していた。
このラジカルな課題には、市民団体、自然保護団体、政治団体なども絡み、
政治問題、訴訟にまで発展している。

環境アセスメントと開発

 この話題に触れると、未だに環境問題=自然保護と短絡的に考える民間人、
コンサル=開発業者と先入観を持つ公務員もいる。
官民の中間的立場を守り続けるのは大変である。

普天間基地の辺野古移設に関し、アメリカのグアム移転予算が削除されたが、
今週、国が提出を予定し、沖縄県が受け取りを拒む環境アセスとは何か。

環境アセスメントと開発

 70年代、環境アセスは大規模な国の事業に対して、
環境への影響評価が制度化された。
当時、同じ職場の隣りの席に、関西空港調査会で
環境アセスを担当する先輩がいた。
日本での環境アセスの黎明期で、その時は環境と開発を
公平な分析で評価できるものと期待していた。
しかし、実際それは違っていた。

 事業が成熟した後で行う法制度では、
物理的に事業の是非を論じることはできない。
調査に時間と費用がかかる上に、
結論ありきの保護対策が示された報告書が作られていく。

 通常、環境アセス調査はコンサルタントに発注される。
自然条件から社会条件まで多岐にわたる調査は、
受けたコンサルタントが、さらに細部の専門家や、大学の研究者の意見を求める。
このような調査を重ねるうちに、結論は暗黙の了解のうえに評価が行われる。
この段階でコンサルは、その結論のための理論の組立てを行う。
担当者がこのような調査の矛盾と、非経済性、非効率性を
知った時はもう事業費が費やされている。
最終的に評価書が提出されると、法律上も、
当時の環境庁は、最終的な意見を述べるにとどまった。

 その後20年、実効性を持たないこの閣議アセスは繰り返され、
ようやく1993年の環境基本法の制定を受け、
1997年の環境アセス法の制定により、
地方自治体でも実行され現在に至っている。

 調査は、対象事業の判定(スクリーニング)からはじまり、
効果的な調査項目を選定することにより(スコーピング)、
環境への影響を分析、予測し事業の評価を行う。

環境アセスの目的は、調査分析結果を事業内容に関する決定(事業の許認可など)に
反映させることにより、事業が環境の保全に十分に配慮して
行われるように進めることである。

 さらに、2008年、生物多様性基本法が制定され、
計画の構想段階で行う戦略的環境アセスメント(SEA)が必要とされ始め、
ようやく環境省のガイドラインが示された。
欧米では既に運用されており、先進国では日本が最も遅れている。
東京都と埼玉県が運用を開始している。
その柱の一つがPI(Public Involvement)住民参加の理念である。
                         
 現在住んでいる場所は、普天間基地を飛び立ったヘリや軍用機が、
泡瀬を越え、辺野古、高江に向かう飛行ルート近くにある。

住民の視点に立つと、環境問題以外の多くの課題が見えてきた。
そして、中立的な立場で話せなくなる自分にもどかしさを感じてしまう。
                     環境省 環境アセスメントはこちら 

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