2012年01月18日

設計者のトレサビリティ

 自分の関わった仕事の結果を、見る機会は少ない。
その後どうなったかは、興味の範囲で覗くのが恐い場合もある。
計画者の立場では、出来上がったものがどう変わっているか不安に感じ、
完成した街から足が遠のくこともあった。
設計者の立場では、現在も機能しているか、自分のミスがなかったか、
心配すると限りなくストレスを感じる。
施工まで関わった立場では、壊れていないか、
維持管理はできているか、心配とその後の姿の興味が尽きない。

 しかし、それから目を背けてはいけないと思う。
同じ街に住んでいると、大雨が降れば調整池や河川に、地震後は護岸や擁壁に、
雪が降れば消雪道路に、イベントがあれば公園にと足は自然に向いていた。
そして、次の計画や設計に役立てたいと思う気持ちとは裏腹に、
どうしようもない現実に直面してしまう。
要らないもの、要るものを間違えたり、バブル後、利用者が少なく、
危険な状態になっていたり、反省しきりのものもある。

設計者のトレサビリティ

 設計者は次の仕事に向かい、後ろを振り返る余裕がない。
設計者として、年間数千万の設計をこなし続けることは容易ではない。
走り続けた末に、いつも気になりながらも、同じ仕事のやり方で、
同じ間違いを繰り返すことになる。

 ようやく自分の仕事を客観的に見れる時が来た。
今回は、冬の公園をテーマに見て回った。
振返ると、満足して計画・設計できたものは何一つない。
業務以上の思い入れを深くしたものが良いとは限らない。
むしろ満足に近づくほど、独りよがりの作品になる。

設計者のトレサビリティ

 イルミに照らされたポケットパークや、雪国風情の落ち着いた公園も、
それなりに評価をうけたものは良いが、
何よりも良かったと感じるのは、人が集まり楽しんでいる姿である。

設計者のトレサビリティ

設計者倫理やアフターケアの課題も重要であり、
技術者、設計者が自分で自分の仕事を再評価、見つめる
設計のトレサビリティ(追跡確認)の時間が必要であると感じる。




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