2012年04月14日

宗教と街づくり

 宗教は人を幸福にし、健康な精神と住みよい環境をつくるためのもので
あるはずだが、時に権威的になると、誤った方向に向かう。
街づくりで最も厄介なものが、宗教である場合が多かった。
開発地の中に共有地が多いほど、その事業は遅れる。
都市生活では、墓地などは迷惑施設である場合もあるが、
文化歴史施設として保存する必要もある。
宗教対政治、観念対科学、文化対経済といった対立構造に陥ることもある。
さわらぬ神に祟りなしであるが、かつて町の中心であった施設であったわけで、
その活かし方を探れば街づくりの目標が見えてくる。

宗教と街づくり

 一方、全国で起きている景観論争の中間的立場での判断が難しい。
浅草寺雷門と斜め前の、浅草観光文化センターの景観論争が話題となった。
冬至の1時間に雷門は日影になるという。
テレビでは、高層建築物が浅草にふさわしいデザインか、という話にすり変っていた。
2年前の高さ40mのビル計画の論争から、ようやく開業に至ったその変更経過は
わからないが、完成品を実際見た感想を述べたい。

宗教と街づくり

結論から言うと、この建物は現代の浅草の景観にマッチした
モダン和風建築物であると思う。
雷門との相性を考えているばかりか、スカイツリーの遠景も想定した
新しい東京の風景なのである。
マスコミの報道は余りに設計者に失礼な、景観に無知な報道であったと思う。
公共物の設計は、自由な発想をフォルムに表現しづらい時世の流れになっている。
むしろ、この施設の是非について、
区役所の決定過程と区の基準を問うべきであろう。

 建基法上は、商業地域での日影規制なので全く問題にならないが、
民法上の景観訴訟になるかというレベルになる。
景観上の課題については次の写真で説明がつく。

宗教と街づくり

誰の目にも、雷門はすでに周囲のビルに埋もれ、
隣りの花の舞、デニーズの方が、明らかな景観阻害と判断できる。
日陰については、すでに1つ隣りのビルが高く、影響を感じない。

宗教と街づくり

 雷門を守る風神・雷神様の意見を聞きたいところだが、
同じくその横に住み、一番被害を被っているはずの交番に話を聞く。
『特に暗い感じというより、夏は涼しいんじゃないかな。
それより今月オープンの方が心配です。』
と、町の安全と平和を考える若い警官の感想であった。

今回は単純な宗教対街づくりの図式ではないが、伝統を守り、
新しい景観を築いていくための景観形成ガイドラインはあるものの、
その運用のためのルールづくりを整備すべきだろう。



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