2013年11月17日

忘れえぬ街 その6

地球環境の変化に翻弄されるカヤンゲル

忘れえぬ街 その6

       忘れえぬ街 その6

 パラオ共和国カヤンゲル州は、コロールから北60kmにある環礁の島々である。
州の人口は200人であるが、実際住む人は100人程度で、5つの集落が点在している。
集落内はヤシの木で覆われ、木洩れ日の森は昼も薄暗く涼しかった。

忘れえぬ街 その6

集落間は石の縁石の古道でつながり、環礁には珍しい古い井戸や
石のプール、謎の石鳥居の遺構もあった。
石貨で有名なヤップ島には、パラオから最も近く、
同じ石の文化が伝わったと言われている。

忘れえぬ街 その6

まだ、古い慣習や環境の残るパラオの離島の雰囲気がある。
森の中のパワーストーンを案内してくれた少年は、
これに触れてはいけないと身を挺するのであった。

忘れえぬ街 その6

2009年と2010年の2度この島を訪れたが、日本のODAによる港湾施設、上水設備、
発電設備などのインフラ援助が行われたこともあり、島民は親日的で我々が村を歩くと、
ヤシの実を取ってごちそうしてくれた。
カヤンゲル環礁は、ロックアイランドで有名なパラオの中では珍しい白砂の環礁で、
日本に最も近く、ビーチの美しさはマーシャルやモルジブの環礁にひけをとらない。

忘れえぬ街 その6

海水温の上昇は礁湖内のサンゴに多大な影響を与えたが、南の無人島は海鳥の
サンクチュアリでもあり、手つかずの自然が残っていた。
鏡面のような海水面は七色にきらめき、パラオ唯一の透明度を誇っている。

忘れえぬ街 その6

パラオ在住の邦人は、観光客の集まるロックアイランド周辺より、
のどかで素朴なこの島の方が、静かで美しいことを知っている。
週に一度の州政府のボートは休みが多く、渡海には何度も苦労したが、
最近、一般観光客用のデイツアーも入るようになった。

忘れえぬ街 その6

 現在、この島と村は地球規模の気候の変化のなかで、重大な危機にさらされている。
この島の標高は数mにすぎず、今世紀末、海に沈む島と言われるツバルと同様に、
地球環境の変化に最も敏感な島の一つである。
周囲の海岸線は浸食しつつ、ヤシの木の倒壊が目立つようになり、島の東部には
タロイモ畑があったが、海水の影響か生育も遅く、茎葉も枯れたものが多かった。

忘れえぬ街 その6

島のJFK小学校は1962年創立の、名前の通りアメリカ資金援助による学校である。
グランドは海面に近く、男女学年関係なくソフトボールに興じる姿があり、世紀末まで
海面上昇の影響を受けることなく、この地に残ることを願うばかりであった。

忘れえぬ街 その6


 先日の台風30号はこの楽園を直撃した。
ヤシの木はほとんど倒れ、集落の建物はすべて損壊し、
インフラはすべてストップしたと報じられた。
その中には、屋根の飛んだJFK小学校の写真があった。

忘れえぬ街 その6

ヤシの生育状況を見ると、半世紀ぶりの台風であったと推測される。
幸い全員無事で、コロールに避難したと伝え聞くが、
どの災害でも小さな離島は救助や復旧が遅れる。

忘れえぬ街 その6

日本政府もようやく援助を表明し、これまでと同じく
日本主導のインフラ整備が進むことが、自然の成り行きであろう。

忘れえぬ街 その6


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