2013年11月22日

都市の寿命

 都市は10年サイクルで変化するという説がある。
大きな都市計画の変更が10年を目安に更新されるという理由によるものだが、
計画された都市はどの位で衰退し、その寿命はどれくらいだろうか。

都市の寿命

60年代から相次いで建設された千里ニュータウン、多摩ニュータウンは、
旧住宅公団の新住事業と特定土地区画整理事業により施行された。
当時の公団の開発要綱は、近隣住区理論に基づき、土地利用と施設整備が行われた。
その結果、建物用途の純化した都市が構成されて行った。

都市の寿命

現在に至り、落ち着いた街が生まれつつある反面、10年後の都市構成を
読み切れなかったために多くの課題が生じた。
1住区に1中学校と地区センター、地区公園という理論が崩れ、現在も校区再編、
近隣センターの撤退という事態を招き、かつての活気と賑わいはない。

都市の寿命

その原因となったのは

1、住区内に想定人口が充填されなかった。
2、周辺の交通状況と生活特性が変わった。
3、少子高齢化が進んだ。

都市の寿命

 今秋、大阪の千里中央駅周辺を歩いた。
駅周辺の公団アパートは、当時10倍ほどの倍率だったが、現在は公団から
UR(都市再生機構)となり空家の処理にあたっている。

都市の寿命
駅近接の中高層住宅専用地域とはいえ、500mの徒歩圏は
駅までバスもなく、高齢者は大型店舗の横を抜け15分かかる。

都市の寿命

最近、南側にモノレール駅ができたために都市の再生が起きているが、
多くの近隣センターの機能は、空店舗の多い地方都市の商店街と同様に変わりつつある。

都市の寿命

 80年代に開発された大阪南港ポートタウンは、ニュートラムを始め当時の都市づくりの
粋と活きを集めたウォーターフロントの埋立地であったが、千里NT同様の問題を抱えつつある。
さらに阪神淡路大震災時の液状化や地盤沈下、南海地震の不安なども含め、
人口は減少し撤退するテナントも増えた。
大阪市内には古い町並みや観光資源も多く、都市開発の視点は、大阪駅周辺の再開発を軸に、
古い街並みの保全とリニューアルに注がれるべきだと確信していた。

都市の寿命

しかし、歴史は繰り返される。
関西圏の土地価格の上昇は、新たな都市開発を呼び込んでいる。
関西の開発の歴史は私鉄会社が中心となり、新たな路線を引き
住宅地開発、不動産販売を行ってきた。
現在行われている彩都開発は、国際文化公園都市の一部で、
URと阪急電鉄が中心となり進められている。
土地利用計画を見た限りでは、民間研究施設地を含み、公園緑地を増やし
低密度住宅地を計ったもので、今まで培った計画論を踏襲した開発である。

都市の寿命

80年代から千里NTから茨木市に至る、モノレール計画に合わせた開発計画に
関わったこともあるが、知らぬ間にここまで進んだことに正直驚いている。
私には、旧日本住宅公団とバブルの亡霊が徘徊しているような印象さえ受ける。
この街の30年後の人口構成はどうなっているのだろう。

都市の寿命

 あるハウスメーカーは100年住宅として製品を売り出したが、結果として、
その新しい住宅地の都市機能は50年先まで対応した計画ではなかったということになる。
ビジネスとしての街づくりを続けた結果、バブルを生みその後の都市の疲弊を生んだ。
このボタンの掛け違いは、日本の都市開発が土地と建物の一体的な整備が行われなかったからである。
土木が恒久的な構造物を完成形として築造するのに対し、建築が100年のリノベーションをも想定した
ビジネスとしての私物を施工する立場の違いでもある。

都市の寿命

 都市の寿命は、圧倒的な自然災害に遭遇した場合と、経済活動が停止した場合が該当するが、
新しい街は30年で疲弊しながら、50年後にはリニューアルが必要ということになるのであろうか。
都市を再生しつつ、新市街地を生み出す都市ビジネスのスキームは理解できるが、
開発による地球環境に与える影響は、COP19の気候変動枠組条約を参照するまでもなく、
都市の発するエネルギーをどう抑えるか、良識ある都市づくりの専門家は答えるべきだろう。


タグ :まちづくり

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